野菜を茹(ゆ)でるときに油と塩

 「野菜を茹でるときに湯に油を加えると沸点が高くなるので良い」と昔はよく言われていました。実はこれは間違いなのですが、先日テレビで同じこと言う人がいたのでブログで取り上げます。
 高校の化学で「沸点上昇」を学習します。「沸点上昇」は水に何か溶けると沸点が高くなる現象のことですが、油は水にほとんど溶けないので、表面に浮かしても細かく分散させても沸点はほとんど変化しません。このへんの理屈は化学的には面白いところですが、話が長くなるので割愛します。
 それでは塩ならばどうでしょう。茹で汁とか味噌汁とかの塩分濃度は1%ぐらいでしょうか。これは約0.2mol/Lになります。塩化ナトリウムは水溶液中でほぼ電離していますので、0.2×2×0.52≒0.2となり、0.2℃沸点が上昇します。たいしたことはありません。沸点は気圧の影響も受けるのですが、0.2℃は約7hPaに相当するので、昨日と今日の天気図で違うぐらいの差です。さらに基山町中心部の標高は40m前後ありますので、海辺の町に比べてすでに気圧が4hPaほど低くなっています。ちなみに圧力鍋はだいたい2気圧(1000hPaほど高い)で沸点は120℃(20℃高い)ぐらいだそうで、これは確実に効果があります。
 塩を入れるのは野菜の緑をきれいにする意味もあるといわれていますが、それを確実に証明する論文を見つけるには至っていません。葉緑素(クロロフィル)とナトリウムの反応で説明されている例もあるのですが、これも確実な研究結果は示されているわけではありません。個人的には怪しいと思っています。
https://www.nutritionist-blog.com/2014/07/blog-post_4307.html
 それではなぜ野菜を茹でるときに油や塩を入れるとよいという説が広まったのでしょうか。私の想像ですが、パスタを茹でるときに味を付けるためとかくっつきにくくするためとかいうのを、野菜にも拡大解釈して理由を後付けしたのではないでしょうか。これらのことを夏休みの自由研究とかで実験しても面白いかもしれません。


参考資料は例えば下記
http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~yamaharu/tenki8.htm
http://fnorio.com/0103heat_engine%28steam_cycle%291/Steam_Tables1.html
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~hiroakio/2008/08ko-100.html